日本企業の人事政策に関する提言

コーン・フェリー・ヘイグループ代表取締役社長 高野研一が日本企業の人事政策に関して提言いたします。提言は全5回+特別篇です。

特別編:パワハラ上司に関する考察

日本に多いパワハラ上司

我々のデータベースを使ってリーダーシップを分類すると、下記のように大きく4つのタイプに分かれることが分かっている。

  1. ビジョン型リーダー/熟練型リーダー
    組織のベクトルを合わせるために積極的に働きかけ、部下の力を引き出すリーダー。
    大きな組織を束ねる上で効果的なリーダーシップ。
  2. 優しいリーダー
    自由放任で部下のやりたいようにやらせるリーダー。
  3. 厳しいリーダー
    自分の思ったとおりに部下を動かそうと、厳しい指示命令で人を動かすリーダー。
    組織が小規模なうちはこれでも業績をあげられるが、組織の規模が大きくなるにつれて逆に問題が顕在化する。
  4. プレイングマネジャー
    自らがプレイヤーの一員として動くリーダー。
    リーダーが忙しく動いている割に業績があがりにくくなる。

この内、パワハラ上司は(3)の極端なケースに該当する。因みに、上記の4つのタイプ毎に、組織風土に及ぼす影響は下記のように変わってくる。

  1. ビジョン型リーダー/熟練型リーダー
    組織の士気や一体感が高まり、優れた組織風土になりやすい
  2. 優しいリーダー
    組織風土は良くなる一方で、ぬるま湯、自己満足になりやすい
  3. 厳しいリーダー
    業績志向性は高まるものの、部下は受身で育ちにくくなり、一体感も弱くなる。行き過ぎると疲弊感や閉塞感が高まり、離職率の上昇につながる
  4. プレイングマネジャー
    マネジメントに時間が割かれないため、組織の士気や一体感が低下しやすい

厳しいリーダーは日本人に多い。海外ではあまり厳しい指示命令に依存してマネジメントをすると、部下が離職していくため、自然にバランスの取れたリーダーシップを発揮するよう牽制が働く。しかし、日本は終身雇用制をとる企業が多く、これまでは部下が辞めていくことが少なかったため、厳しいリーダーシップから脱却する機会がなかなか得られなかった。

厳しいリーダーには自分自身が優秀で、まじめな人が多い。自分の思ったとおりに部下を動かすことで成果があがるため、それ以外のリーダーシップに思いが至らない人が多い。また、オーナー企業などではこうしたリーダーの方が上から見て頼もしく見えるため、重用されることが多い。ただ、部下の側から見ると、背景や文脈に関する説明もなく、ただ、目先の指示だけが飛んでくるため、非常にストレスフルな状況に置かれる。このため、盲目的に受身になるか、精神的に病んだり、離職するかのいずれかに行き着くことが多い。

人材難、品質偽装の背後に厳しいリーダーがいる

近年顕著になってきている、流通、外食、小売、サービス業などでの離職率の増加、製造業での品質偽装問題などの背後にも、この厳しいリーダーが存在することが多い。
流通、外食、小売、金融、サービス業など多店舗展開・他拠点展開をする業界では、一つひとつの営業所や店舗の規模が小さく、厳しいリーダーでも業績を挙げられる。その一方で、本部からのモニタリングが利かないため、厳しいリーダーシップに歯止めがかからなくなり、パワハラ、メンタル、大量離職などの問題に発展することが少なくない。
実際、我々が様々な企業と実施した調査でも、厳しいリーダーとビジョン型/熟練型リーダーの間では、部下の離職の多さに30%ぐらいの差が出る傾向があることが明らかになっている。
また、昨年話題になった品質偽装問題も、「間違ったことを指摘すると上から押しつぶされる」「意見があっても黙っていたほうがいい」といった風土が偽装の温床になったケースが少なくない。

パワハラ上司を変えるには?

ただ、この問題が容易ではないのは、多くの厳しいリーダーは、自分のやっていることが正しいと信じて疑っていないことにある。厳しいリーダーに「なぜ指示命令ばかりして、部下に任せようとしないのか」と聞くと、十中八九返ってくるのは「自分の部下は未熟だから」という答だ。他のタイプのリーダーからはこうした答が返ってこないのを見ると、明らかにモノの見方にバイアスがかかっていることが分かる。特に、達成志向性の高い性格の人ほどこの傾向が強く、注意されたぐらいではなかなか変わらない。
このため、こうしたリーダーを変えるためには、自分が正しいと思ってやっていることが、いかに組織風土を悪化させているのかを事実として突きつける必要がある。我々の調査では、組織風土の5~7割は上司のリーダーシップによって決まることが分かっている。特に営業所や店舗のような独立した組織では、そのウェートがさらに高まる。

このため、自分のリーダーシップが、ビジョン型/熟練型リーダーと比べて、いかに組織風土を悪化させ、疲弊感や閉塞感につながっているのかを認識させる必要がある。たいていの場合は最初大きなショックを受けるものの、継続的に支援を行っていくことで、よりバランスの取れたリーダーシップの習得につながっていくことが多い。



コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社
代表取締役社長 高野研一
プロフィール 

その1: 次世代を担う経営者の選抜・育成のあり方を見直す
その2: プレイングマネジャーからビジョナリー・リーダーへの脱皮を促す
その3: 進化論型経営の導入により情報革命を生き残る
その4: 組織風土・生産性の問題を解決する
その5: 役員指名・後継計画を強化する
特別篇:パワハラ上司に関する考察