デジタル革命期における経営人材育成プログラム

デジタル革命の中で新たな企業価値を生み出す経営人材を育てる
コーン・フェリー・ヘイグループ

デジタル革命が業界バリューチェーンを根底から変える
21世紀に入り、デジタル革命が進展し、IoTやAIを利用した新製品・新サービスが次々と登場しつつあります。しかし一方で、それが大きな企業価値につながった事例はまだ少数に留まります。その理由は、デジタル技術は新製品・新サービスの開発につなげているだけでは大きな価値を生まず、バリューチェーンそのものを変革した時に大きな価値が生まれることに、まだ多くの人が気づいていないからです。

デジタル革命は、過去に起こった産業革命や、市民革命のように、百年単位の大きな変化です。産業革命が大量生産・大量消費のためのインフラをグローバルに張りめぐらせたり、市民革命が民主主義という社会システムをグローバルに広めたように、デジタル革命も単なる新製品の追加では留まらない破壊的な影響力をこれからもたらすようになるでしょう。

デジタル革命は情報通信技術の普及が引き金になっています。「情報システム」というと、いま我々は企業の中に閉じたシステムをイメージしますが、今後はこれが会社の枠を越えて拡大し、社会全体、バリューチェーン全体をカバーするようになるでしょう。すると、次に起こるのは業界バリューチェーンの再構築です。情報システムが企業毎に分断されている現在のバリューチェーンには、様々な無駄があります。アマゾン・ドット・コムのように、消費者からサプライヤーまでをひとつの情報システムでコントロールする企業が現れると、彼らは既存のバリューチェーンをスクラップ&ビルドすることで、エンドユーザーに新たな価値を提供し、お金の流れを変えようとします。その結果、書店や本の卸に流れていたお金の流れを、アマゾンに振り向け、一気に急成長することが可能になりました。

このように、デジタル革命期の経営人材には、単なる新製品開発ではなく、業界バリューチェーンを変革することが求められます。そして、それに成功した企業が、プラットフォーマーとして台頭していきます。彼らは破壊的なバリューチェーンの再編を仕掛けることで、既存の企業から経済的価値を奪取していきます。いま、多くの企業で、いかにしてプラットフォーマーの台頭から自社のビジネスを守るかが論点になっていますが、百年単位の革命は、そうした議論自体を意味の無いものにしていきます。いまのビジネスモデルやバリューチェーンにしがみついている限り、格好の的にされてしまうからです。いま問われるべきなのは、いかにして自社がプラットフォーマーになるかでしょう。これからの経営人材には、バリューチェーンの中の一機能を担うという発想から脱皮し、バリューチェーン上のプレイヤー全体をコントロールしていく発想が必要になるでしょう。

デジタル革命後のビジネスモデル
デジタル革命後のビジネスモデルは、産業革命がもたらしたビジネスモデルとは多くの点で違いがあります。例えば、企業の基本的な機能を問われた場合、これまでは「製品開発」「生産物流」「販売」「サービス」「金融」などが真っ先に頭に思い浮かびました。多くの企業の組織体制も、こうした機能別に構成されています。

しかし、デジタル革命後は、こうした基本機能がことごとく変わっていきます。例えば、化粧品業界を例に取ると、これまでは「製品開発」に強みを持つ化粧品メーカーが、発信力を誇示してきましたが、いま、製品開発ではなく、「コミュニティ開発」に強みをもつアットコスメに消費者の目が移ってきています。メーカーの発信する情報より、自分と同じ趣味を持ったユーザーが集まり発信する場の方が、消費者にとって価値を持つように変わってきているのです。

また、「販売」という行為も、「市場の需要の見える化」に変容しつつあります。例えば、グーグルやアマゾンは、ある商品に関心を持つ人が、このエリアにどのぐらいいるかを見える化することに成功しています。もはや営業員を雇って売りにいくのではなく、ユーザーに検索させることでニーズが生まれた瞬間をキャッチし、広告やリコメンドを出すことでマネタイズすることが可能になっています。

「サービス」も、これまでは正社員を雇って家事などのサービスを提供していたのが、今後はクラウドソーシングにより、リアルタイムで主婦やアクティブシニアなどの働き手をマッチングさせるように変わっていくでしょう。それによって、プラットフォーマーは固定費を抱える必要がなくなり、圧倒的なローコストでサービスを提供できるようになるでしょう。

今後、製品開発部門や販売部門のあり方、雇用のあり方は破壊的に変わっていくでしょう。それに伴い、経営人材に求められる視野や発想法も大きく変わっていきます。業界バリューチェーン全体の再構築を考えられる人だけが、デジタル革命後の世界において経営人材として生き残っていくことになるでしょう。

デジタル革命期の経営人材に求められるのは「仮説検証力」
ただ、これまで産業革命の論理の中で育ってきたビジネスパースンに、いきなりデジタル革命後のビジネスモデルを考えろと言っても、容易ではありません。人間の脳は、経験したことのないことはイメージもできないようにできているからです。また、多くの大企業には、分業体制の中で、ひとつの機能の経営を担える人は多数いますが、(製品ではなく)事業を生み出し成長させる経験をした経営人材は極めて限られています。ましてや、業界バリューチェーンを変えた経験のある人材はほとんどいないでしょう。

その一方で、終身雇用制をとる多くの日本企業にとって、社外からデジタル革命に適応できる経営人材を採用することも簡単ではないでしょう。まず、そうした人材が市場において極めて稀であるのに加え、仮に採用できたとしても定着させることに苦労するでしょう。

それでは、デジタル革命後のビジネスモデルを考えられる経営人材を、どのようにして確保すればいいのでしょうか。それには、シリコンバレーの起業家がやっていることが参考になります。シリコンバレーの起業家は、自分の時間のほぼ100%を仮説の検証に費やしています。つまり、「情報通信技術を利用することで、この業界のバリューチェーンをこう変えることができないか」「それによってお金の流れがこう変わり、このぐらいの企業価値を奪取できるのではないか」これが「仮説」です。そして、調査や実験を通じて裏づけを取りにいくことが「検証」です。

ベンチャーキャピタルは、こうした起業家に対して、調査や実験のためのお金を提供しています。彼らは、起業家の話を聞き、その仮説を検証するためにどのような調査や実験が必要か、そこにどのぐらいのお金が必要になるのかを考えます。そして、それを上回るリターンが期待できればその企業家に投資します。逆に起業家の側は、ベンチャーキャピタルから1億円のお金を引き出せたとしたら、それで何回実験ができるか、どのような実験をどのような順番で実施するのが効果的かを考えます。こうした仮説の検証こそが、デジタル革命という非連続な変化の中で、企業価値を生み出すビジネスモデルの発見を可能にしているのです。今後、大企業の中にいる経営人材にも、仮説検証力が試されるようになっていきます。

デジタル革命期の経営人材育成プログラム
第二の創業期ともいえる現在、問われるべきなのは、自社に、デジタル革命後のビジネスモデルを生み出すための仮説検証に多くの時間を投入している経営人材がどれだけいるかでしょう。仮説の検証は、訓練によって上達することが可能なスキルです。なぜシリコンバレーであれだけのイノベーションが生まれてくるのでしょうか。それは、仮説検証に自分の時間の100%を投入する人材が集まっているからです。そして、それを通じて知見や能力の蓄積が進んでいるからです。いま、多くの日本企業がデジタル革命の中でビジネスモデルやバリューチェーンの再構築を進めるためには、こうした仮説検証の訓練と、能力・知見の蓄積を通じた、経営人材の確保が不可欠になります。

コーン・フェリー・ヘイグループは、そうした企業のニーズに合わせて、デジタル革命期の経営人材育成プログラムを開発してきました。そこでは、経営理論を学ぶのではなく、デジタル革命後のビジネスモデルや、業界バリューチェーンの再構築について仮説を立て、それを裏づける事実(エビデンス)を取りに行く訓練を行ないます。

まず、企業価値とは何か、新たな企業価値について仮説を立てるとはどういうことかについて土地勘を掴みます。何でもいいから仮説を立てればいいというわけではなく、大きな企業価値に直結する仮説でなければ、検証活動が無駄になってしまいます。

次に、業界バリューチェーンの再構築を通じてお金の流れを変えたり、自社のビジネスモデルを変える方法について仮説を立てます。そして、それらの仮説を検証するために、具体的な調査や実験をデザインします。例えば、(1)潜在的ユーザーに会って、顧客にとってのメリットに関する仮説を示し、それが相手に刺さるか反応を見たり、(2)最先端の実験をしている人に会って、技術的可能性について仮説を示し、意見を求めるなどの活動に取り組みます。

よく、情報収集やヒアリングと、仮説の検証を混同している人がいますが、このデジタル革命期の経営人材育成プログラムでは、その違いが鮮明になります。「貴社の生産プロセスにおける課題は何ですか?」といったヒアリングをしても、多くの場合、意味のある論点は浮かび上がってきません。「そうですねえ・・・(そんなこと突然聞かれてもねえ)」といった反応が返ってきたり、そもそもアポイントも取れない場合が多いでしょう。しかし、「この技術をこう応用すれば、貴社の生産プロセスのこの部分がこう変わり、このぐらいの利益が生まれる可能性があります」という踏み込んだ仮説を提示できれば、それが刺さったときは全く違った反応が返ってきます。「試作品ができたらすぐ持って来てください」「実はうちのコスト構造はこうなっていて、そのアイデアを使うと、こっちでこのぐらいの効果が出るかもしれませんね」「それもいいんですが、こういうことはできませんか」と、相手が勝手に自社の課題やニーズ、事業構造について話し始めるのです。このように、いい仮説には相手の頭の中を刺激し、相手自身も意識していなかったようなアイデアを引き出す効果があります。こうした仮説を立てる訓練ができてくると、仮説を示しただけで、いままで会えなかった人に会うことも可能になります。デジタル革命期における経営人材は、実際にそうして人脈を広げているのです。

もちろん、こうした踏み込んだ仮説を立てようとすると、顧客の潜在的ニーズや、業界のバリューチェーンについて土地勘を養う必要があります。このため、1週間や2週間の訓練では効果がなく、通常6~8ヶ月間程度仮説検証に取り組みます。また、現業を抱えながら参加する人が多いため、自分の時間の20%程度をデジタル革命後のビジネスモデルを考えるための仮説検証に投入します。

デジタル革命が業界バリューチェーンを塗り替えつつある現在、トップクラスの人材の時間を、過去のビジネスモデルを回すことだけに投入していては、いつプラットフォーマーからはじき出されるか分かりません。デジタル革命後のビジネスモデルを考えるための仮説検証に優秀な人材の時間をシフトしていくことが、自らがプラットフォーマーになる可能性を拓くことになります。

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